キミと世界が青めくとき 【完】


「媚び⋯?」



更に意味がわからないと表情を顰めさせたわたしに先輩はハンバーグを頬張りながら「そーそー」と頷いた。



「好きなものの話って、されただけで嬉しくなるし楽しいじゃん」

「⋯はい」

「その話をしてる間は警戒心も薄れるじゃん」

「警戒心?」

「あー⋯なんて言うの?仲良くなるキッカケって、趣味が同じだったりするだろ?好きなもんが同じだと、人って相手に対して距離が近くなるというか、仲良くなりやすくなる」

「⋯確かに」

「で、俺はキミと仲良くなりたいんだけど、残念ながら本を読む事が好きなわけではない。だけどやっぱキミに興味があって仲良くしてもらいたいから、キミの好きな話をする」

「⋯はい」

「そうする事でキミは返事をしてくれるから、俺はいつも何の本読んでるの?って質問してるわけ」

「⋯わかる様な、わからない様な?」

「こっちが恥ずかしいからわからなくていいよ」

「⋯そうですか?」

「うん」



添えてあったニンジンを咀嚼しながらもうこの話はお終いだという表情を見せる先輩には悪いけど、まだ気になる事はある。



「でも今は強引にとはいえこうして昼食を一緒に食べるくらいですし、先輩は前に友達って言ってくれたじゃないですか。だから仲良くなる為のその質問はもういらないんじゃないですか?」



媚びだと言ったそれを、今もする意味がわからない。

仲良くなったとわたしが言ってもいいのか疑問だけど、初対面の時のような警戒心はもうないし、普通に会話だってしている。



だから─────、




「んー、そうだね。いらないっちゃいらない」

「⋯」

「でも、それ聞いた時のキミの顔が好きなんだよなぁ」

「⋯は?」

「それに、俺本は全然読まないし、多分これからも読んだりしないんだろうなーって思うけど、澄の好きなものは俺も好きでいたいんだよ」

「益々意味がわかりません。本を読まないのに、それを好きでいたい?」

「好きでいたいっつーか、大切にしたい」

「⋯」

「澄の世界に触れてみたいし、欲を言えば、」

「⋯」

「澄の世界に俺を入れて欲しい」

「⋯」

「この感覚、わかんない?」



分かるわけがないと、そう言いたかった。

だけどほんのちょびっとだけ、わかる様な気もした。というより、わかりたかったのかもしれない。