キミと世界が青めくとき 【完】




ファミレスに入るとミストとは比べ物にならない涼しさを感じる事が出来る。

涼し過ぎて、かいた汗が冷えて風邪を引いてしまわないか心配になるほど。



「お好きな席へどうぞ」と案内された先輩は、窓際のボックス席へと腰を下ろす。

着いてきてしまった手前、お昼を一緒に食べる選択肢しかないわたしはもう諦めて先輩の向かい側に座ることにした。



「何食べる?」

「えっと⋯、」

「何でもいいよ。ほら、メニュー」



わたしの方にメニューを差し出してくれた先輩にお礼を言って、目を通す。

ハンバーグにグラタンにパスタとファミレスには何でも揃っている。

お昼をわざわざ食べるのが面倒だと思っていたくらいだから空腹ではなかったはずなのに、こうしてメニューに載っている写真を眺めているとお腹が空いてきた。



「⋯この、トマトの冷製パスタがいいです」

「うん、わかった。デザートは食後にまた注文しよう」

「⋯はい」



わたしが指さした冷製パスタを確認した後、知春先輩は店員を呼ぶためのベルを鳴らした。

するとすぐに店員がやって来てオーダーを取っていく。

先輩はチーズINハンバーグを注文していた。





「いただきます」

「いただきます」



しっかりと両手のひらを合わせてからナイフとフォークを手にした先輩は「見てこのチーズ、凄くね?」と真ん中で切り分けたハンバーグからとろりと溢れたチーズを見て笑っている。

その姿はまるで幼い子のようで、先輩に可愛いなんて思うのは失礼なのかもしれないけれどそう思ってしまった。



「どう?美味しい?」

「はい。とっても」

「そっか」



フォークに巻き付けたパスタを口に運んだわたしにそう聞いた先輩は、返事を聞くとふわりと微笑む。

この人は本当にいつでも笑っている。

だから、先輩の周りはいつも柔らかいのだろうか。


普通に過ごしている中で、空気は触れただけで硬いか柔らかいかなんてわからないし、雰囲気なんてものは曖昧な言葉すぎる。

それなのに先輩の周りの空気は、雰囲気は柔らかいと胸を張って言えるほど。

この人の周りにはいつもそよ風が吹いているみたいな。