キミと世界が青めくとき 【完】


だって、嘘つかれたって思ったから。

実際はわたしが勝手に本気にして期待してしまっただけだけど、海行こうって、友達だって言ってくれた事をわたしは忘れ去る事なんて出来ないし、なかった事にも出来ないから。



「⋯お久しぶりです」



先輩の目も見ることが出来ずに、気まずさを感じていた。

だけど気まずいと思っているのはわたしの方だけだった様で、知春先輩はもう十分涼んだのかミストの届く範囲からから出て「この後なんか用事あんの?」と話を続ける。

だからわたしもミストから出て「この後ですか?」と返した。



「特に用事はないですけど、図書館に行こうと思ってて」

「夏休み中もキミの世界は健在ってわけか」

「はい」

「ならさ、図書館行く前に一個提案あるんだけど」



そう言ってミストせいでほんのりと湿り気を帯びた前髪を掻き上げた先輩は、ニコリと笑った。




「昼飯、一緒にどうですか?」




例えば、お母さんなら電子的な文字のやり取りの時に敬語になるし、凛がわたしに敬語で話した事はない。

そうやって、癖や関係性からその人の口調は大体把握する事が出来る。

お母さんからメッセージが敬語で届いているからと言って怒ってると思う事はないし、敬語のそのメッセージが実際に怒っているわけでもない。


だけど知春先輩は時折こうしてわたしに敬語を使う。



それがわざとである事は理解出来るけれど、その理由がわからない。


照れ隠しなのか、揶揄っているのか、はたまたそこに意図はないのか。


何にせよ、先輩という立場にいる彼の口調は全く掴む事が出来ないからわたしは戸惑ってしまう。



知春先輩はやっぱり、わたしの中で掴みどころのない変人という立ち位置だ。