椅子に座り、さっそく本を開く。
ペラリとしか形容しようのない紙を捲る音を聞きながら、ふと思い出すのは知春先輩のカメラのシャッター音。
懐かしく感じる程聞いていないわけではないのに、何故か懐かしく感じるのはどうしてだろう?
横を見てもそこには誰もいない。
それが当たり前だったはずなのに、隣に誰もいない事に違和感があるのは何故だろう?
「海⋯、行ってるのかな」
わたしとの約束は冗談だったけど、友達と伊豆に行くというのは本当だと思うからもしかしたら今頃知春先輩は海ではしゃいでいるかもしれない。
青い海に入りながら、今日の太陽にも負けない程のあの笑顔で笑っているのかもしれない。
そう思ったら、ほんの少しだけ寂さを感じた。
海に行こうって言ってくれた事が冗談なんだとわかったら、悲しくなった。
それはいつの間にかわたしが知春先輩に心を許してしまっていた証拠で。
感想ノートでのやりとりもそうだけど、怖いだの嫌いだの言いながらもやはり人は一人きりではいられないのだと痛感した。
友達なんて欲しくなかったはずなのに、凛と比べることをせずに接してくれる人を常に求めていた。
裏切られた、なんてお門違いだってわかっている。
何も裏切られてなんていないし、先輩は少し変わったところがあるけれどいくら凛を知らないといえ、こんなつまらないわたしを友達だと言ってくれた。だから先輩を責めるのは間違っているとわかってる。
だけどどうしても、寂しい気持ちは消えてはくれなかった。



