キミと世界が青めくとき 【完】


仮に全てを人のせいに出来るなら、わたしがこんな風に根暗の捻くれ者になったのは凛のせいだと言ってやる。


昔からだ。
昔から凛が右がいいと言えばわたしが左で凛が右になった。
凛が青がいいと言えばわたしが赤で凛が青になった。

わたしがこうしたいと言ってもいつも採用されるのは凛の方。

家族旅行もいつも凛が行きたいところが優先された。


凛はそれをわかっている。

自分とわたしが違うことをわかっている。

そして優越感に浸っているんだ。

自分は姉とは違うと、絶対に心の底で思っているはずだ。


「お姉ちゃんはこうだから⋯」
「わたしは出来るけどお姉ちゃんには無理だと思うよ?」


そう言っていつもいつも、わたしを否定する。



中学の頃、凛が好きな人にバレンタインデーのチョコレートを作りたいと言ってきた事があった。
その時はどうしてわたしに言ってくるんだろう?と不思議だったけれどその疑問はすぐに解決する。

料理が苦手な凛は比較的料理を苦手としないわたしを使ってチョコレートを用意したのだ。

代わりに作って欲しいと頼まれた時はさすがに良くないと、相手を想うなら失敗したとしても自分で作った方がいいと言ったわたしに凛が言った言葉は「わたしが渡すことに意味があるの」だった。


それはそうだ。

凛の想い人にわたしがチョコレートを渡しても何の意味もない。

だけどその言い方がまるでわたしはただの凛の駒だって言われている気がして酷く傷付いたことを覚えている。

わたしが作る時間も手間も全て無かったことにして良い部分だけを持っていこうとする凛に腹が立った。


そういうところが怖い。

そういうところが嫌い。


わたしは凛の影武者でも駒でもないはずなのに、わたしにはわたしが主人公の人生があるはずなのに、周りの人間も凛も、あたかもわたしは凛の人生の付属品かの様に扱う。

凛の出来損ない、失敗作の様にわたしを見る。



わたしが好きな人も、そうだ。

彼もわたしを凛と比べて蔑む。


だからわたしは自分以外の全ての人間が嫌いで怖い。