「そ!仲の良い友達と!せっかくだしお姉ちゃんも来れば?」

「⋯いや、わたしはいいよ」

「なんで?広大も来るし、お姉ちゃんの知らない人ばっかって訳でもないよ?」

「広大も?」

「うん。わたしも広大もいるし、どう?」



行きたいとは思わなかった。

だけど、感想ノートにあんな事を書いてしまったからか、行ってみるべきなのでは、と謎の使命感に襲われる。

夏休みに入る直前、知春先輩と連絡先を交換した。未だにメッセージは一度も来ない。



あんな事言うから⋯。

二人きりで海に行こうなんて知春先輩が言うから、わたしの夏休みは知春先輩と過ごす時間があるのかなって期待した。

海に行くという経験をさせてくれるのは、たくさんの経験をさせてくれるのは先輩なんじゃないかって自惚れた。



だけど未だに来ない連絡。

もしかしたら海に行くと話したことを忘れてしまっているのかもしれないし、実現しない冗談の約束だったのかもしれない。



だからきっと、感想ノートに書いた“たくさんの経験”は知春先輩とするものではないのかもしれない。




「⋯⋯行って、みようかな」

「本当に!?」

「うん」

「オッケー!じゃあ、明日十時に家出るから、その予定でお願いね」

「わかった」




人とBBQなんてした事ない。

だけどちっとも楽しみだなんて思わなかった。

ワクワクなんてしなかった。



わたしは、わたしの価値を嫌という程理解しているから。