夏休みというものはとても暇で、何もする事がない。



感想ノートにはたくさんの経験をしたい。なんて大それた事を書いたけれど、実際はただただ家と図書館の往復の毎日だ。

だけどそれが嫌ってわけではなく、むしろ一日中好きなことをしてられるのは夢のよう。


図書室は図書室とは比べ物にならない数の書籍が揃っていて、それだけで気分が高揚する。
ネットで調べた面白そうな本を図書館に行って読んで、一週間に一回くらいは勉強をする為に図書館へ向かう。



そんな生活を七月の終わりまでしていたわたしを見て凛は「つまんないでしょ?」と言ったけれど余計なお世話である。


毎日お洒落をしてどこかへと遊びに行っている凛はそれはそれは楽しそうでキラキラしているけれど、だからと言って凛がわたしの夏休みの過ごし方にケチをつける権利はない。



凛にケチをつけるなんて気はないのかもしれないけれど、やっぱりわたしはそう捉えてしまう。

こういう所がダメな所だと自分でもわかってはいるけれど、長年染み付いた屈折した性格は簡単に直せるものでもなく⋯。




「お姉ちゃん、明日BBQするんだけど来る?」



八月に差し掛かり、夏休みもあと一ヶ月となったある日、相も変わらずベッドの上で本を読んでいたわたしに問いかけた凛の顔は、まるでコンビニ強盗犯が被るような目出し帽⋯じゃなかった、凛の顔にはぷるんと潤ったパックが貼ってあった。


夜のスキンケアとやらをしている凛は、今日は週二回のパックの日らしい。


目と口のみが見えた凛の顔を見ながら「BBQ?」と繰り返す。