それからすぐに夏休みがやってきた。




夏休み中は図書室に来る事はないから、最後に感想ノートに書き込む。


今日書き込むのは、冒険アクションファンタジー。

小人が人間の世界を旅しながら様々な試練を乗り越えていくという小説だ。




<夏休みの間、わたしもこの小人のミゲルの様にたくさんの経験をしたいと少しだけ思う事が出来ました。よい夏休みを>



ズラズラと書きだした感想の最後にそう記して、ノートを閉じる。




最後のよい夏休みを。という言葉は、自分自身に向けたものでもあり、感想ノートの彼へ宛てたものでもある。


顔も名前も知らないけれど、彼がこの本を読んでくれるとも思わないけど、彼の夏休みも充実したものであるように。


そんな事を思いながら──────。