「お姉ちゃん、また本読んでるの?」



姉妹共用の部屋は何かと不便だ。

こうやって二段ベッドの下で本を読んでいるだけで「ちゃんとベッドから出て読まないと目が悪くなるよ」と小言を言われるから。

だけどそれを小言と捉えるわたしはかなり性格が悪いのは自覚している。

確かに二段ベッドの下の段は影になっているし、暗いから。だけどちゃんとベッドライトを付けているからそこまでの不快さはない。



「凛、お風呂上がったならわたし入ってくるね」

「うん、いってらー」



部屋の真ん中にあるソファーに座ってドライヤーで髪の毛を乾かす凛は姉のわたしから見ても可愛い。

小さい頃はそっくりだった顔も、メイクを覚えた凛とはもう、あまり似ていない。

そっくりと言ってももともと凛は華のある顔立ちと雰囲気を併せ持っていたからわたしが同じメイクをしたところであそこまでの可愛さは出せないだろう。


そんな凛はとてもいい子だ。


高校二年生になっても共用の部屋に対して不満を口にする事はない。

友達も多くて、彼氏がいた事もある凛はわたしなんかとは比べ物にならないくらいの不便さを感じているだろうにそれを口に出す事はないし、周りの人間と同じように「澄は凛とは違う」とわたしに言う事もない。



だけどわたしは凛が世界で一番怖い。