「ねぇ、澄」
そんな事を考えていれば、先輩が手にしたカメラのレンズがわたしの方へと向けられていて────。
カシャリ、と鳴った音に、また写真を撮られたんだとわかった。
「何度も言いますけど、勝手に写真を撮る事は盗撮っていって立派なはんざ、」
「現像してまた明日持ってきてあげんね」
「人の話聞いてます?」
「しょうがないじゃん。澄はなんだか撮りたくなるんだよ」
「⋯先輩って絶対不意打ちで撮ってくるじゃないですか、それ嫌です」
「キメ顔したわたしを撮れって?」
「そうは言ってないですっ⋯!」
揶揄うように白い歯を見せる先輩に「また耳赤くなってるよ」と追い打ちをかけられ、言われてみれば耳ら辺が凄く熱を持っている事に気付く。
キメ顔とは言っていないけど、不意打ちで撮られるわたしはきっと酷い顔をしていると確信出来る。たから撮るなら撮ると一言言ってくれればいいのに、先輩は撮る度に不意打ちをしてくるんだ。
「でもキミ、初めて会った日に1+1は?って聞いても何も言わなかったじゃん」
「あれは完全に先輩不審者だったじゃないですか。それなのに笑顔なんて向けられませんよ」
「なら今なら撮るよって言えばキメ顔してくれんの?」
「⋯すみません、言葉のあやです。不意打ちも嫌ですけど、そもそも写真を撮られる事が嫌です」
「なんで?」
「なんでって⋯、」
「まー、どんな理由があっても俺は澄を撮りたいから撮るよ」
「なっ、」
「嫌なら四六時中お面でも被ってな」
「横暴過ぎます!」
バンッと机を軽く叩いて抗議するわたしなんて気にしていないのか、先輩は悪びれる様子もなくまたシャッターを切る。
「すげー躍動感」
「もう、本当にヤダこの先輩」
「言ってくれんじゃん」
またパシャリとシャッター音が鳴って、深いため息を零す。
きっと何を言っても先輩はわたしを撮るのだろう。
というか嫌がれば嫌がるほど撮ってくる気がする。



