去年の冬から続く感想ノートでのやり取りは、やり取りと表現するにはあまりにも会話として成立していない。

だけどわたしはいつしかこの感想ノートでのやり取りに困惑以外のものを感じ始めていた。


一人で書き綴っていただけのノートに返事をもらえる。その返事はたった一行だけの事が多かったけれど、少しだけ右上がりに書かれた雑な文字を見るのが楽しみになっていた。

この前書いた本の感想に返事は来ているだろうか?

感想ノートを開く度、そんなことを期待して。


そして今日も、感想ノートにはその人からの返事が書かれていた。

わたしが感想を書き込んだのは青春群像劇を題材にした小説。今までのようにわたしが書いた感想に対する返事は書かれていなかった。

だけどわたしが感想を書き込んだページの下の方には、〈青い表紙が綺麗だった〉と書いてある。


それを見た瞬間わたしは僅かな胸の高鳴りを感じた。


わたしも、同じことを感じたから。

鮮やかな青色の表紙はとても美しくて、青色の真ん中に白い文字で書かれたタイトルがパッと目を引く、そんな表紙だったから。

どこの誰かもわからないけれど、この人もわたしと同じことを感じてくれたというのが嬉しかった。

わたしが良いと思ったものを他の誰かにも良いと思ってもらえた事に喜びを感じた。




この人が本を読んでくれたのかはわからない。

だけどきっと、この人はわたしが感想を書いた本を手に取ってくれたはずで。

それだけの事なのに、それだけの事が嬉しかったんだ。


出来ることなら一人がいい。

だけど心のどこかでは人との触れ合いを欲していて。このまま感想ノートでのやり取りがこの形のまま続けばいいのにと思ってた。