キミと世界が青めくとき 【完】


「髪色はわざと黒に染めてるんですか?」

「え?なんで?染めてないよ」

「そうなんですか」

「うん。この真っ黒は純日本人の父親の遺伝」

「いいとこ取りですね」

「そ?ありがと」



瞳は色素が薄くて、色素の濃い髪色やフサフサなまつ毛。

まるで計算された作り物のように綺麗な人。

髪色が真っ黒なおかげてよりその瞳が際立つし、きっとお爺様譲りの白い肌だってより目立つ。



「先輩、彼女いないんですか?」

「もしかして狙ってる?」

「んなわけないです」

「澄ちゃんは素直だねー」



楽しそうに笑う先輩が暑いのかネクタイを緩める。

その手は広大とは違った。

広大はどちらかと言うと厚くてしっかりとした手で。深爪のある、男の子らしい手をしている。

だけど知春先輩はピアニストやマジシャンの様なしなやかな手をしている。
指だって細くて、だけどちゃんと大きい手のひらで。


先輩は帰り際や会話の最中によく頭を撫でるくせがあるけれど、この手に頭を撫でられてるんだって考えたら、少し照れくさくなった。

今更だけどこんなに綺麗な人がわたしに触れるなんて、もったいないって意味のわからない感情まで湧き上がってくる。



「それでいるんですか?いないんですか?」

「どっちだと思う?」

「そういう質問って、チャラいクズ男のセリフですよ」

「じゃあ素直に言っとく。いないよ、彼女なんて」

「⋯意外です」

「そ?彼女いたら毎日放課後に澄といないでしょ」

「それはそうですけど⋯」

「だから安心してこれからも俺といてよ」

「なんですか、安心って」

「毎日俺といても誰よこの女!って怒鳴り込んでくる奴はいないってこと」