キミと世界が青めくとき 【完】



「じゃあ可愛い後輩?」

「⋯ただの後輩です。ていうかマイブームにわたしを巻き込まないで欲しいんですけど」

「だってこのマイブームは澄がいないと成立しないじゃん」

「先輩って変わり者っていうかなんていうか⋯」



わざわざ毎日やってきて、「今日は何読んでるの?」から始まる会話。

たまに勝手に写真を撮られていたりする。

そして三十分もしない内に先輩は「また明日」と言ってフラリと帰っていく。


きっと知春先輩という人物は相当な暇人で変わり者に違いない。



「で、キミは一体何冊読んでんの?」

「一週間にですか?」

「そうそう」

「大体、三冊くらいですかね?二日に一冊のペースなので」

「マジでソンケー」

「ノリが軽すぎません?」



あまりの軽さについ笑ってしまえば、一瞬目を大きくさせた先輩が「澄も笑うんだね」と微笑んだ。



「わたしだって笑う時は笑いますよ」

「そりゃそうだ。人間だもんな」

「⋯そうです」



わたしだって、笑う。

それは当たり前だ。

だけどこんな風に人前で、作り笑いじゃなく笑ったのはいつぶりだろうか。


例えば広大と些細なことだとしても嬉しい事があって笑うって事はあったかもしれない。

でもそれは一人で笑っていたというか、心の中で笑っていたという感覚に近くて。



「わたし、ちゃんと人間ですよ」



久しぶりに人間らしく笑えた気がした。