それから知春先輩は言葉の通り、翌日も図書室へ来た。
その翌日も、その翌々日も。
「凄いね、澄。一週間で何冊読んでんの?」
「あの、知春先輩?」
「んー?」
「先輩って友達いないんですか?」
定番化したわたしの隣に腰掛ける先輩は、本棚から適当に取った文庫本をペラペラと捲って「活字ばっかじゃん」と当たり前のことを言う。
そんな先輩に少し冷めた言葉を向ければ、下に下ろしていた目線を上げてわたしの方へと顔を向けた先輩。
「なにそれ。澄には言われたくないよ」
「わたしに友達がいないって言いたいんですか?」
「実際そうだろ?」
何故か先輩にこんな事を言われてもムカつきはしなかったし、劣等感も感じなかった。
それは先輩がわたしを見下して言っているのではないとわかるから。
「わたしの事はいいんです⋯わたしは先輩の事を聞いてるんですっ⋯」
「俺に友達がいない様に見える?」
「⋯見えませんけど⋯、」
「けど?」
「毎日毎日ここに来て、暇なんですか?」
「キミって意外と質問魔だよね」
いつもと変わらずクスクス笑う先輩は文庫本を閉じて机に頬杖をつく。
サラりと黒髪が揺れて、優しげな目元がとろんと更に下がった。
「澄も友達じゃないの?」
「⋯は?」
「そりゃ俺には友達はたくさんいるけど、澄だって友達の一人だろ?」
「いや、」
「放課後は友達の澄と過ごすってのが最近の俺のマイブームなんだよね」
「いつからわたし達友達になったんですか⋯」
形の良い唇が綺麗な弧を描いて、ゆっくりと紡がれる言葉はどこか魅惑的だ。



