キミと世界が青めくとき 【完】



「これ」

「⋯?何ですか?」

「昨日のキミの写真」


そう言ってわたされたのは、今と同じ場所に座り本を読むわたしの横顔の写真で。



「こういうの盗撮っていうんですよ」

「もう本人が知ってんだから盗撮じゃないだろ」

「そんな事関係ありません」



撮られた側が盗撮写真の存在を知ったところで盗撮は盗撮だ。先輩の謎の論理で犯罪を歪めないで欲しい。



「ま、そんな事はさておき、それキミにあげるよ」

「いらないです」

「なんで?よく撮れてると思わねぇ?」



上かは覗き込むようにしてテーブルに座っている先輩が腰を屈める。



「綺麗だとは、思います⋯」

「そりゃまあ、被写体が極上だからじゃん?」

「笑えないジョークはいらないです」

「割とマジで本心なんだけどなぁ」



クスクスと笑う先輩を無視して写真に目線を落とす。

これは昨日、撮られた写真だ。

なんて事ない、ただの写真。

だけど夕陽が窓から差し込んでいる感じやその反射がとても綺麗で、陰と陽、それが見事に写真の中に収められている。

綺麗で美しいはずなのに、つい昨日撮られたというのに、どこか懐かしさを感じるような温かい写真。



「どう?俺って写真の才能あると思わねぇ?」

「⋯⋯思います」

「ははっ、よろしい」



またクスクスと笑った先輩は昨日の帰り際と同じ様にわたしの髪をクシャりと撫でる。

誰かに頭を撫でられるどころか髪を触られる事すらあまり経験がなく、不快に思いそうなところだけど、何故かそれも嫌ではなかった。

それが先輩だからなのかそうじゃないのかはわからないけれど。