キミと世界が青めくとき 【完】




はたと気付く。


感想ノートには〈僕も青好き〉と書かれていた。

僕も⋯、僕も、僕も。


「男の人だったんだ⋯」


初めて知った返事をくれるその人の性別。

特に男性だとか女性だとか意識した事はなかったけれど、男性とあまり関わりを持ったことのないわたしは無意識のうちにその人は女性なのだと認識してしまっていた。

だけどそうか。よく考えてみれば、雑で右上がりのその字はどちらかというと男性的で。


なんだか返事をくれるその人が男の人なのだと思うと一気に居た堪れない気持ちになる。


恥ずかしいともまた違って、どちらかと言えば疑念のような。


だってこれも偏見だけど、男の人がわざわざ感想ノートに返事をくれるなんて⋯。

相当な暇人か面白がっているだけなんじゃないかって。

それは女の人でも可能性はあるのだけど、わたしはあまり男の人に対して免疫がない。

だから心の端っこの方で男の人はわたしのような女を嘲笑っているんじゃないかって思いがあって。



もし、わたしの感想を笑われていたら⋯。



想像してみると不愉快極まりない。

笑われていたらそれこそ穴に入りたくなる。


だけどそうと決まったわけじゃない。

きっとこの返事をくれる彼はわたしの感想を笑ったりしていてない。


そう信じてわたしは次に読む小説を探す。



恋愛小説を読んだから、次は時代小説でも読もうかな。


歴史ジャンルが並ぶ棚へと足を進めて、適当に視線を動かす。

たまたま目に止まったのは、山本周五郎。

前に一度読んだことのある作者だ。


歴史小説ながら人間の本質をリアルに描くほんのり温かさと熱を感じる物語が印象的でよく覚えている。



次はこの人の本にしようと決めてわたしは彼の小説を手にした。