ビックリし過ぎて、頭が真っ白になって、その言葉の意味さえわからなくなりそうになった時に再度聞こえてきた「こっち見て」という先輩の穏やかな声に釣られて顔を上げる。
目を丸くして瞬きを繰り返すわたしとは対照的に先輩は柔らかい笑みをその顔に浮かべながら、頭を下げた事で僅かに乱れたわたしの髪を整えてくれた。
その顔はなんだか余裕があって、どうしようもなく理不尽さを感じてしまう。
わたしだけ慌てて困惑して、恥ずかしい。
「ビックリした?」
「とても⋯」
「はは、だよなぁ」
呑気に笑い声を上げる先輩は照れる素振りなんて見せない。
だからもしかしたらわたしの“好き”と先輩の“好き”は違うんじゃないかってそんな事を考えたのに─────。
「澄と友達でいるのは凄く楽しかったよ。でも、俺は澄と違う関係になりたいとも思った」
「⋯っ」
「友達よりももっと近くで澄と話したり、澄が本を読んでるところを見つめたり、笑い合ったりしたい」
「⋯先輩、」
「俺にしか見せない表情を写真に撮りたいって思った」
真っ直ぐ過ぎる言葉にキャパオーバーになりかけたわたしはこれ以上先輩の言葉を聞いていたらどうにかなってしまいそうだった。
恥ずかしくて居てもたっても居られなくなりそうなのに、永遠にその言葉を聞いていたい様な不思議な感覚になる。
「そっ、」
「そ?」
「それはっ、⋯恋愛、的な意味で、デスカ⋯?」
「ふっ、うん。そーいう意味ですよ?」
「⋯っ」
「困るっていうのは、俺の気持ちを澄は全然理解してないんだろうなって思ったから。いかにも鈍そうだし」
「にっ⋯!?」
「妹さんもそういう意味で言ったんだと思うよ」
カタコトになってしまったわたしに軽く笑いながら昨日の事を説明してくれ後、少し首を傾けた先輩はわたしが言おうと決めていた言葉を先に言ってしまう。
「澄のことが好きだから、傍にいたい」
「つ、つまり⋯、」
「彼女になってくれませんか?」
夢の中にいるんじゃないかって思った。
絶対にそんなことあるはずがないのに重力を感じていないみたいにフワフワとしていて、心が落ち着かない。
何度も何度も先輩の言葉を頭の中で反芻しながら、僅かに震える指先を隠す様にして握りしめた。



