そう言ったわたしに先輩はとても嬉しそうに微笑んだ。
こんな風に笑ってくれる人を先輩以外に知らない。
「あの、知春先輩」
「ん?」
「先輩に二つ聞きたい事があるんです」
「聞きたいこと?」
「はい。いいですか?」
そう聞いたわたしに先輩は「いいよ」と言って体をこっちに向けてくれる。
その仕草がきっとこの人は何を聞いても嘘偽りなく答えてくれるんだろうと安心させてくれたから、緊張しながらも言葉を発する事が出来たんだ。
「昨日、先輩と凛の会話に早とちりしてしまった事はわかったんです。だけどわからない事もあって⋯、」
「わかないことって?」
「わたしに困っているって、事です」
「⋯」
「心当たりはありすぎるんですけど、もし宜しければ教えて頂けないでしょうか?」
「心当たりありすぎるんだ?」
「っ、困らせてしまって申し訳ない気持ちはあります。でもその理由がわからないんです。⋯わたし、まだ先輩ともっと仲良くなりたい」
「⋯」
「隣で先輩と同じ景色を見て、一緒にいたいんです」
「⋯うん」
「だから、困らせている原因を教えて頂けたらわたし、直しますから⋯」
心当たりがありずきる、なんて酷い話だ。
これまで先輩にたくさん迷惑を掛けてきた事も、昨日の様に酷い言葉を浴びせた事もある。
だけどわたしは先輩の傍にいたい。
許されるなら、これからも先輩の隣にいたい。
そう思いを込めて下げた頭。
微かに言葉が震えてしまったのは怖かったから。先輩がどんな言葉を返してくれるのか全く想像ができなかったから。
だけど例えそれがわたしにとって望んでいる答えじゃなかったとしても先輩は答えてくれる事を知っているから、一言一句だって逃すまいと耳を澄ませた。
嘘でもその場しのぎの言葉でもない本心だけを言葉にしてくれる事が唯一の救いだから。



