いつもと変わらず片手にカメラを持った先輩はゆっくりとわたしの隣まで来て座る。
先輩の一つ一つの仕草や行動の音までしっかりと聞こえてしまうのは図書室だから。
もしかしてわたしの煩い鼓動も先輩に聞こえているのかと思うととても恥ずかしくなる。
コトりと音を立ててテーブルの上に置かれたカメラ。
これは先輩の宝物だ。
「昨日のことだけど、」
僅かに緊張が伝わってくる先輩の声。
だけど出来る限り普段を装ってくれている先輩はあまりその声色を固くせずに、優しい瞳を向けてくれる。
西日が照らすその瞳はどこまでも澄んでいて、わたしは先輩の優しくて真っ直ぐな瞳が好きだと感じた。
「昨日の事は凛から聞きました」
「あの子から⋯?」
「はい。⋯なんて言うかわたし、凛のことを勘違いしていたみたいで⋯。辛かったのはわたしだけじゃなかったし凛にだって誰にも言えない思いを抱えていたんだって初めて思い知らされました」
「⋯」
「蟠りが解けたというか、やっと長年の呪縛から解放された気がしてます」
「⋯」
「今なら心から凛を好きだって言えるし、わたしはわたしのままで良いんだって思えます」
「⋯そっか」
「先輩の言う通り、自分を卑下しても何の意味もなかったです。楽になる事も何かが変わる事もなかった」
「うん」
「まだまだ自分が好きだなんて言えないけど、過去最高に自分が好きではあります」
「⋯」
「わたしはわたし。この世界にたった一人の吉川澄って人間をちゃんと受け入れられる気がします」
そう思えたのは昨日凛と向き合えたからで。
だけどきっといきなり凛と向き合うなんて出来なかったし、話をした所でこうして自分を受け入れようなんて思えなかった。
そう出来たのは間違いなく、先輩のおかげ。
先輩がわたしを認めてくれたから。
傍にいて、煌めく景色を見せてくれたから。



