「ねぇ、お姉ちゃん。わたしね、さっき橘先輩に今お姉ちゃんに話した事と同じ事を話したんだ」
「⋯先輩に?」
「うん。わたし、お姉ちゃんのものを奪いたいと思ったりもしたけど、わたしだって結局はお姉ちゃんのことが大切なの」
「だからってどうして先輩に⋯」
「懺悔のつもりだった」
「懺悔⋯?」
「お姉ちゃん最近すごく楽しそうだったよ」
「え⋯?」
「夏休みもちょこちょこ図書館じゃない所に出掛けてたのに気付いたし、お姉ちゃんの机の引き出し、たくさん写真があった。イルカのぬいぐるみも」
「っ」
どうしてそれを凛が知っているの?と思った疑問は「ごめん、ハサミを借りようとした時に見えちゃって⋯」の言葉によって解決した。
そして凛は言葉を続ける。
「写真を撮ってくれたのは橘先輩で、あのぬいぐるみをくれたのも橘先輩でしょ⋯?」
「っ」
「お姉ちゃんが最近楽しそうなのも橘先輩の影響でしょ?」
「⋯うん」
「だから、お姉ちゃんのことを頼みに来たの」
「頼みにって⋯、」
「姉は捻くれているし、すごく自己肯定感も低いし劣等感の塊だけど、良いところもたくさんありますって。わたしの勝手な憶測だけど姉は橘先輩のことを心から信頼しているから絶対に裏切らないで欲しいって」
「凛がそう言ったの⋯?」
「さっきも言った通り、お姉ちゃんのものを奪いたかった時期もあったけど何だかんだわたしお姉ちゃんのこと好きだから。余計なお世話だと思ったけど今までの懺悔のつもりで橘先輩にお願いした。お姉ちゃんを裏切らないでって」
「⋯、」
「でもわたしがお節介を焼く必要なんてなかったよ」
「⋯どういう、」
「あの人は誰かにそんな事頼まれなくてもお姉ちゃんを裏切ったりしない。お姉ちゃんと誰かを比べたりなんてしないし、橘先輩の中でお姉ちゃんは吉川澄以外の何者でもないんだよ」
「⋯っ」
「つまり橘先輩はお姉ちゃんのコンプレックスやトラウマごと、受け入れてるって事」
「⋯じゃ、じゃあどうしてあんな会話になるの?」
「あんなって?」
「凛言ってたじゃん。わたしにしないか?とか、お姉ちゃんとわたしどっちが好きか?とか⋯」
「あんなの冗談だよ」
「冗談⋯?」
「お姉ちゃんへの懺悔のつもりだったけど、お姉ちゃんにはこんなにも自分だけを見てくれている人がいるんだって思い知らされてちょっと悔しくて⋯。橘先輩も冗談だってわかってたと思うけど、冗談でも笑ってくれなかった」
「⋯っ」
「それくらい、橘先輩は真剣にお姉ちゃんと向き合っていたんじゃない?」



