翌日、広大の態度は何も変わらなかった。

凛と三人で登校する日常も。

だけど「おはよう」と言ったわたしに「おはよ」と返してくれた広大の顔は何となく普段より柔らかい気がして、それだけで昨日話せた意味があったのだと思った。


あのまま何も話さなければお互いに傷付き合ってモヤモヤしたままだったと思うから。




学校に着いて、いつもの様に本を読む。

挟む栞は昨日先輩にもらったもの。

青色のそれはいつ見ても綺麗で、それだけで気分が上がる。



「今日は図書室に来てくれるかな⋯」



誰にも聞こえないほど小さな声で呟く。

昨日は先輩が気を使って図書室には来ないでいてくれたけれど、今日は来てくれるだろうか。

約束も何もしていないけれど来て欲しい。


知春先輩と過ごすのは楽しいから。
他の誰とも共有出来ない時間を過ごしているみたいに、唯一無二に落ち着くんだ。



──────それに聞きたい事もある。



昨日からずっと気になっている事。



もしかしたら先輩が─────、



そこまで考えたところでHRが始まるチャイムが鳴り、一日の授業が始まる。

わたしは逸る胸を抑えながら、担任の話に耳を傾けた。