午後の授業もあまり頭に入らなかった。
わたしの頭の中は広大のことと、知春先輩のことでいっぱいで、最後の授業は古典という眠くなる授業第一位だった事も相まって先生の話は右の耳から左の耳へと直ぐに抜けていった。
チャイムが鳴りやっと今日一日の授業が全て終了して、わたしは一目散に教室を出る。
目指す先は広大の教室。
鞄も自分の席に置きっぱなしのまま急いだ甲斐もあり、丁度教室を出てきたところの広大と鉢合わせた。
「っ、広大っ!」
喧嘩とはまた違うのかもしれないけれど、今朝あんな事があったばかりだからか広大はわたしの顔を見るとすぐに目を逸らして通り過ぎようとしたけれどわたしが珍しく大きな声を出したからか、少し目を見開いて立ち止まってくれた。
「広大っ⋯、」
「⋯何だよ」
「は、話が、ある」
「話⋯?」
「だから着いて来て欲しい」
謝りたい、わたしの気持ちを聞いて欲しいという思いばかりで他のことは何も考えずに来てしまったせいでどうやって広大に話を聞いてもらえばいいのかわからない。
「話ってなに?ここじゃダメな話なわけ?」
「ここじゃ話しづらい」
「何の話だよ」
傷付けてしまったのだから広大が怒っているのは当然で、わたしとなんてもう話したくなんかないという気持ちがヒシヒシと伝わってくるけれど、ここで諦めるわけにはいかない。
だってわたしは広大の全てを否定してしまった。広大の優しさも今までの築き上げてきた関係も全てを無かった事にしてしまった。
身勝手だという事は十分わかっている。
だけどちゃんと謝りたいんだ。
「お願い、広大。今朝の事で言いたい事があるの」
「俺は話なんかねーよ」
「お願い、わたしの話を聞いて欲し、」
「いつもみてぇに図書室行って本でも読んどけよ」
「っ⋯、お願い、話を聞いて欲しいの」
鋭い視線を向ける広大に怯んでいる暇なんてなかった。謝らないとずっと今日の事を後悔すると思ったわたしは広大に負けじとその瞳を見つめ返して──────、
「マジでウザイ。⋯早くしろよ」
広大が折れてくれた事に心底安心した。



