「広大に謝りたい⋯」
「うん」
「酷いこといっぱい言ってごめんねって、全部全部、謝りたい。許してくれるかはわからないけど、広大の優しさを無かった事にしてしまった事をちゃんと謝りたい」
「澄」
唯一、自分のことで好きなところはこの名前。
好きなこの澄という名前を先輩が呼ぶと胸の奥がキュッとなる。
「これあげる」
「⋯?」
「朝コンビニでパン買った時に何かのキャンペーンで貰ったやつなんだけど」
そう言ってわたしの手を取り手のひらを開いた先輩はその上に青色のアクリル素材で出来た栞を乗せる。
青色の栞は下にいくに連れて半透明になっているグラデーション模様で、とても綺麗だ。
「くれるんですか?」
「いらないかもしれないけど、これ貰った時澄にピッタリだって思って」
「わたしに⋯?」
「俺は本を読まないから栞って使わないけど、澄だったら使うのかなって。それに、澄は青色が好きでしょ?」
「──────え?」
「だからもしかしたらいるかなって。もし要らなければ全然いいんだけど、」
先輩にしては珍しく不安そうに、窺う様にわたしを見つめるからわたしは思わず栞が乗った手を引っ込めて大切に抱き寄せた。
「いります。欲しいです」
「本当に?タダだし、パンのおまけだよ?」
「それでも欲しいです。綺麗だし、今使っている栞は紙製なんですけど、最近ボロボロになってきてしまったところで⋯」
「本当に?ならもらってくれると嬉しい」
「はい。ありがとうございます、大切にします」
「大袈裟だなあ」
と笑う先輩は言葉にはしないけれど、勇気づけてくれたんだと思う。
広大に謝りたいわたしを。
許してもらえるのか不安なわたしを。
あんな事を言ってしまって後悔しているわたしを。
勇気づける為に、今このタイミングで栞をくれたのだと思う。



