「今日、広大に酷いこと言いました」
「酷いこと?」
「広大はわたしを可哀想だと思ってるから仲良くしてたんだ。って、こんな幼なじみ嫌だって思ってるんでしょ。って」
「⋯彼にそう言ったの?」
「はい⋯」
本当は、わかってるんだ。
口に出してしまえばそれが本当になってしまう気がしたという事はわたしの主観でしかなくて、実際に広大がそう思ってると口にした事はない。
「⋯俺は、澄と広大くんの関係とか今までの事とか何も知らないけど、でも、彼はきっとそんな事思ってないと思う」
「⋯っ」
「澄、夏休みにファミレス行った事覚えてる?駅前で偶然会った時」
「覚えてます」
「その時BBQ行ったって話してたじゃん。その時言ってたよ。知り合いは二人しか居なくて、途中からは一人だったから楽しくなかった。って」
記憶を辿れば、そう言った覚えは確かにある。
憂鬱で、楽しくなかった夏休み最初の思い出。
「その知り合いって妹と彼だったんじゃない?」
「そうですけど⋯、」
どこか含みを持たせた先輩の言い方に何を言いたいのだろう?と戸惑いながらも頷く。
すると先輩は「やっぱり」と口にして柔らかく微笑んだ。
「途中まで一緒にいてくれたのって、広大くんだったんじゃない?」
「っ」
「彼も彼で友達が居るだろうし、ずっと一緒に居られたわけじゃないかもしれないけど、それでも澄を気にかけていた事は事実なんじゃないかって俺は思う」
「⋯っ」
「それは彼の純粋な澄への気持ちだと思うよ」
「わたしへの⋯?」
「うん。そこにキミが可哀想とか、嫌々とか、そういう感情はなかったんじゃないかな」
「⋯はい、」
「まあ、何も知らない俺からしたらって話だけど」
「⋯そんなこと、ないですっ」
こうやって人に言われないとその事に気付けない自分が情けない。
いつも大切な事に気付かせてくれる先輩に感謝しかない。
きっと先輩はこういう事を見逃さないから、人の思いを見落とさず掬い上げる事が出来るから沢山の素敵な光景をいくつも形に残せるんだと思った。



