キミと世界が青めくとき 【完】




「先輩はいつもパンなんですか?」

「大体はそうかな。たまに学食行く事もあるけど」

「3つも?」

「今日は少ない方」



そう言いながら早くも二つ目のパンの袋を開封した先輩はパックの牛乳をストローで吸った。

カレーパンに、チョココロネ、メロンパンと統一性のないパン。菓子パンとはいえ、三つもあればわたしはお腹いっぱいになってしまうけど先輩はそうではないらしい。



「普段はフツーに五個とか食べるよ」

「意外です」

「そ?」



恰幅が良いとは到底言えない、どちらかと言えば細身の先輩のどこにそんな量が入るのだろう?と考えたけれど、そういえば夏休み中に一緒にご飯を食べた時も先輩は大食いっぷりを見せていたっけ。



「澄の一番好きなおかずは?」



二つ目のチョココロネを食べながら先輩が聞く。

誰かとお昼を過ごすのもそうだし、こういう会話をするのも殆ど初めてだ。

それがむず痒くって、楽しい。



「一番好きなのは玉子焼きです」

「玉子焼き?」

「はい。うちの玉子焼きは甘くって、とても美味しいんですよ」

「玉子焼きって家庭の味出るもんな。⋯あ、だから一番最初に食べてたのか」

「⋯っそんなところ見てたんですか?」



たまたま今日は一番最初に食べただけだけれど、好きなものを一番最初に食べる派だと思われたらどうしよう?と意味もわからず焦る。

まぁ、実際は何も困ることなんてないのだけれど。



「⋯⋯本当にこうしてお昼を一緒に食べるなんて思いませんでした」



さわさわと揺れる葉を眺めながら呟いた言葉に先輩は優しく目尻を下げて笑った。



「今度見かけたら一緒に食べようかって言ったじゃん」

「そうですけど、本当にお昼までわたしと過ごしてくれるとは思ってなくて⋯」

「何で?」

「何でと言われても⋯。先輩は友達も沢山いるじゃないですか」



だから本当にこうしてわたしと一緒に昼休みを過ごしてくれるなんて思ってはいなくて⋯、



「でも澄も友達じゃん」



だからその言葉にハッとした。



「澄も俺の友達。だから飯だって一緒に食べよーよ」

「っありがとう、ございます」

「なんで礼?」



ははっと笑った先輩に心が温かくなっていく。



友達なんていらないし、どうせ出来ないとすら思っていたはずなのに、心の底では誰かと笑い合いたかった。分かり合いたかった。


これは感想ノートに返事をもらえた時の気持ちに似ている。

自己満足のはずの感想ノートに返事がきて、それが続いていくうちにわたしは返事を楽しみにしていたしやり取りを楽しいと思った。

誰かに好きなものを理解してもらえる。

誰かがわたしの自己満足であるはずの感想を受け止めてくれている。

そう思ったらすごく楽しくなって⋯。



友達なんていらなかったのに、それはただの諦めでしかなかったのだと今なら思う事が出来る。

こうして先輩と出会えたから──────。