「図書室にいたら、先輩が声を掛けてくれたって?」
「うん⋯」
「⋯⋯そんでお前は呑気に先輩と仲良くなったつもりでいんの?」
「⋯どういう意味?」
「もしかして恋愛感情とか持っちゃったりしての?」
「だからどういう意味?」
明らかに蔑んだ嫌味の混ざった言い方をする広大に眉を寄せる。
広大が何を言いたいのかさっぱりわからなかった。
ジッと広大を見上げるわたしに広大は何に対して嫌悪感を感じているのかわからないけれどその瞳は敵対視している様にも見える。
チッと耳に届いた舌打ちに、理不尽さを感じずにはいられなかった。むしろ舌打ちしたいのはこっちの方だ。
「勘違いすんなよって事だよ」
苛立ちを隠す事のない広大から落とされた言葉はあまりにも酷いものだった。
「橘先輩って絶対いじめとか見逃せないタイプっぽいじゃん。一人の奴とか放っておけない、ボランティア精神に溢れた人」
「⋯」
「だから澄みたいな奴に声を掛けたんじゃね?」
「⋯」
「一人で本なんか読んでていかにもボッチのお前を可哀想に思って仲良くしてやってるだけだよ」
「何が、言いたいの⋯?」
「勘違いすんな。先輩はお前が可哀想に見えたから一緒にいてくれてるだけだ。先輩の周りにいない珍しいタイプだから放っておけないだけだ」
「⋯は、」
「もしお前が本気で橘先輩と仲良くなれたとか、⋯好きだ、とか思ってんなら傷つく前に先輩から離れろ」
目の前で広大の口から出る言葉に吐き気がしそうだった。
だって、おかしいでしょ?
広大は先輩のことを何も知らないのに、あたかも先輩のことを知っている風で話す。
ボランティア精神に溢れた人とか、可哀想だと思ったとか、それはただ広大が勝手にそう思っただけで先輩の気持ちではない。
わたしは一度これはボランティアだとか、可哀想だねとか言われた事ないし。
もちろん、そんな事を言う人なんていないと思うけれどわたしは広大よりは橘知春という人を知っていると断言出来る。
たくさんの時間を共に過ごし、たくさんの言葉を交わした。
だから間違っても広大の言葉を鵜呑みになんてしない。
信じるのはわたしが経験した時間と交わした言葉だけ。



