翌朝、何事も無かった様に三人で登校する。
何事も無かった様に、凛と広大が前を歩いてその後ろをわたしが歩く。
何も変わらない朝の風景。
⋯⋯チラチラと広大の視線がわたしに向けられている以外は。
「⋯⋯」
前を歩く広大が何かを言いたそうに時々こちらを振り向く。どうせ昨日の事で言いたい事であるのだろう。凛と同じで「意外だ」と言いたいのかもしれない。
だからわたしは敢えてその視線に気付かないフリをして無視をした。
そんな広大がわたしを呼び出したのは学校に着いてすぐ、HRが始まる前の自由時間の時だった。
いつもの様に自分の席に座って本を読むわたしに「吉川さん」と声が掛かる。
その声に本から視線を上げれば、何度か話をした事のあるクラスメイトの女の子が教室のドアの方を指差していて────、
「呼んでるよ」
クラスメイトが指差した先にいたのは広大だった。
わざわざ呼び出してまで昨日の事を聞きたいんだろうか。
どうして先輩の様な人と一緒にいたのか?⋯⋯そんなに気になる事だろうか。
人の事など放っておいてくれていいのに。
そう思いながらもクラスメイトが呼びに来てくれた事もあり無視は出来なくなった。
「わかった。ありがとう」とクラスメイトの女の子にお礼を告げて席を立つ。
重くなる足取りは、何を聞かれ何を言われるのかが予想出来てしまうからで。
つい零れたため息は深いものだった。