その後わざわざわたしの最寄り駅まで送ってくれた先輩と分かれて家に帰った。



凛は先に帰っていた様で、部屋で制服から部屋着に着替えているとすぐさま「橘先輩とどういう関係なの?」と聞かれた。

おもちゃやお菓子やプレゼントと同じでわたしの物を欲しがる凛は、わたしと仲の良い先輩の事も取ろうとする。

この表現が正しいのかはわからないけれど、先輩はどちらかといえば凛側の人間だ。

明るくて友達が多くて。

だから凛はわたしが先輩の様な人と仲良くしている事が不思議で堪らないのだろう。気に入らないとさえ思っているかもしれない。


もし凛が先輩に近付いて、先輩に凛と比べられるのが怖かった。


だけど今日、先輩は吉川澄というわたしを見てくれた。わたしだからと言ってくれた。


─────もう、怖くない。


知春先輩がわたしと凛を比べる事は絶対にない。




「友達、だよ」



こんな風に凛に誰かを友達だと胸を張って言えたのは初めてかもしれない。

わたしは一人が楽だと意地を張っていたし、実際に友達なんて存在はいなかった。

だけど今は自信を持って知春先輩は友達だと言うことが出来る。先輩自身がそう言ってくれたから。それが凄く、勇気をくれた。



「友達⋯?」



予想外の言葉が返ってきたのか、凛の瞳が訝しげに細まる。



「うん。先輩が言ってくれた。友達だって」

「⋯なんで澄と友達?」

「わからない。だけど知春先輩はそう言ってくれた」



そう言ったわたしに凛は数秒黙り込んだ後、寄せた眉をそのままに



「⋯⋯なんか、意外だね」



と口にした。