「じいちゃんはさ、普段は無口で思ってる事をあんまり口には出さないんだ。だけど俺と親が将来の事で言い合いになると必ず俺の味方になってくれる」
「⋯」
「きっとじいちゃんは俺の親の気持ちもわかるんだと思う。だから親の気持ちを否定はしない。けど、親と喧嘩してどうしたらいいのか分からなくなってる俺のところに来て言うんだ。<お前の将来はお前のものだ>って」
「⋯」
「失敗しても成功してもお前のものだからお前が未来を決めていいんだ。その代わり例え食いっぱぐれたり、写真を撮るこが嫌になって夢に破れてもそれは自分以外の責任には出来ない。やりたいならやればい」
「お爺様が掛けてくれた言葉ですか⋯?」
「うん。じいちゃんは普段無口だしカメラを向けると照れて顰めっ面するのに、俺が撮った写真を見ていつも言うんだ」
「⋯」
「<お前の撮る写真が好きだ>って」
「っ」
「俺にカメラをくれたあの日から、小学生の俺が撮った写真にも、今でさえ。じいちゃんはいつも俺の写真を好きだって言ってくれる。だから俺は親に反対されても夢を諦めたくないって思ったんだ。俺の写真を好きだって言ってどんな時でも味方でいてくれる。やってみろって背中を押してくれる」
「⋯」
「ただそれだけでいいんだよ。俺の撮った写真を好きだって言って心の底から背中を押してくれる。それだけで充分なんだ」
前を見ていた先輩の瞳がわたしの方へ向く。
たくさんの光を吸収する瞳は今日も、今も、煌めいている。
「好きなことがあるって素晴らしい」
「⋯え?」
「じいちゃんの口癖」
ニカッと白い歯を見せながら笑う先輩は「だから」と言葉を続ける。
「澄の世界は素晴らしいんだよ」
「⋯っ」
「誰にも否定出来ないし邪魔出来ない澄だけの世界だ。それに俺は澄が本を読んでいる横顔が好きだし、本の話をしている澄がキラキラして見える」
「⋯っ先輩、」
「それだけで充分じゃない?」
好きなものを人から否定され、それが本というだけで暗い奴だって思われてきたわたしと、写真を撮る事が大好きなのに周りからその夢を否定されてきた先輩。両親と夢の間で辛い思いをしてきた先輩。
わたし達は好きなことも境遇も何もかも違うかもしれないけれどどこか通じるものがあるのだと思う。
先輩にお爺様がいてくれてよかった。
先輩がわたしを見つけてくれてよかった。
先輩はわたしの好きなことを笑ったりしないしら否定したりしない。
いつもわたしに本の話をしてくれるし、話すわたし飽きずに絶対にいつもにこやかに相槌を打ってくれる。
それはきっと先輩にも大切な好きなことがあるからだろう。



