「俺は、澄の好きなことを否定したりしない」
「⋯っ」
「だって好きなことがあるって事は素晴らしい事なのに誰かに否定されたり馬鹿にされたりするなんておかしいと思わない?」
「⋯っ、」
「俺はおかしいと思うから、絶対に澄の世界を否定したりなんてしないよ」
知春先輩の声は予想していたよりずっと優しくて柔らかくて、わたしは止めどなく溢れる涙を手で拭った。
先輩の顔を、見たかったから。
さっきまで見たくないと思っていたのに、あまりにも先輩の声が優しかったから安心してしまって、今先輩がとんな表情で言葉を紡いでくれているの知りたくなったんだ。
「それに俺も澄の気持ちがわかるから」
「⋯わたしの気持ちを⋯?」
「もちろん全てじゃない。だけどわかってあげられる事も少しはある」
涙を拭って、しゃくり上げてしまうのを堪えながら先輩の顔を視界に捉える。
その表情はやっぱり呆れても怒ってもいなくて、何故か泣きそうになりながら微笑む先輩の姿にわたしは思わず呼吸すら忘れて先輩の瞳を見つめた。
まるで知春先輩は全身でわたしに寄り添ってくれているみたいに、その淡いブラウンにわたしを移す。
ゆっくりとまつ毛が上下する度に、世界が止まっていく様な気さえした。
公園では子どもとお母さんが遊んでいて、フェンスの向こうにはスケボーを楽しむ数人の男子がいて。
カラスも蝉も鳴いているのに、まるでこの世界でわたしと知春先輩二人だけが切り取られた様だった。



