キミと世界が青めくとき 【完】





「それなのにっ⋯、わたしの好きな世界まで人は否定するんです」

「⋯」

「わたし自身の事だけじゃ満足せず、わたしの世界まで否定する」




「<また読んでるのか>、<本ばっか読んで暗い奴>、<よく飽きないね>って。凛も広大も、よく話したことないクラスメイトまで、みんな否定する。わたしは何も悪いことなんてしてないのに、好きだから本を読んでいるのに、あたかもそれが変わった事のように陰口を言う」

「⋯」

「好きなことをしているってそんなに悪いことですか?」

「⋯」

「わたしの性格が暗いからっていうのもあるかもしれません。だけどよく話したこともない人に本ばっか読んでるから暗いんだって言われなくちゃいけませんか?」

「⋯澄」

「凛とくらべて澄はって勝手にがっかりされて⋯それなのにわたしの世界まで馬鹿にされて⋯」

「⋯」

「先輩っ、わたし、苦しいですっ⋯」

「⋯」

「悲しいし、悔しいっ⋯、」



悲しさからか悔しさからか、それとも本音を口に出したからか。

ポタリと瞳から零れた涙が、ギュッと握りしめた手の甲に落ちる。

こんな事を誰かに言ったのは初めてだった。

先輩にだってこんな心の内の話を喋るつもりはなかった。

だけど知春先輩にだから、言えた。



一度零れた涙は堰を切ったように溢れ出して止まらない。

次から次へと手の甲に落ちる涙はキリがなく、涙のせいでぼやける視界では今先輩がどんな表情をしているのかさえわからなかった。




もしかしたら呆れているかもしれない。

こんな話をされても⋯って戸惑っているかもしれないし、ただ自分の汚い部分を晒してしまっただけのわたしを軽蔑しているかもしれない。


だから視界がぼやけていて良かったのかもしれない。

今先輩がどんな顔をしているのかなんてわからない方が良いのかもしれない。





「─────俺は、」




だから先輩の声がハッキリとした音でわたしの耳に入った時、時間よ止まれと切に願った。

続く言葉を聞く事が怖かったから。

だけど当然、時間が止まってくれるはずがないし、先輩が言葉を止める事もなかった。