キミと世界が青めくとき 【完】





「少し話そう」と言った先輩はわたしの腕を掴んだままエスカレーターを降りてショッピングモールを出る。

そしてショッピングモールの横に作られている大きな公園に入ると近くのベンチにわたしを座らせた後、自身もその隣に腰を下ろした。



映画を観終わった今は夕方で、気温は昼間より随分と下がり吹き抜ける風が気持ち良かった。




「──────澄は、妹が嫌い?」



暫く無言の時間が続き、先輩が探る様に出した言葉にわたしは何て答えたらいいのかわからなかった。


凛の事は嫌いだ。だけど嫌いになりきれないのも事実で。

血の繋がった妹を嫌いだと口に出来ないのはやっぱり凛が妹だからだと思う。




何も答えないわたしに先輩は少し考える素振りを見せた後、困ったように笑った。



「ねえ、澄。前に<澄は優しくない男が好きなのか>って言った事覚えてる?」

「⋯⋯はい」

「その相手ってもしかしてさっきの広大くん?」

「⋯⋯っ」

「⋯そっかそっか。⋯そうなのか⋯」



何度か軽く頷いた後、どこか遠くを見つめる先輩の瞳は何を想っているのだろう。

肯定も否定もしないわたしに先輩は無言を肯定と捉えた様で。だけどわたしは肯定も否定も、本当にどちらとも答えられなかった。



だって、わからないんだ。


確かに広大の事を好きだと思っていた。

だけど先輩に好きな人が広大なのか?と聞かれてすぐに頷く事が出来ない。

頷く事が出来ない時点でもう広大への気持ちが薄れている事なんて明白なのに。




「広大くんとキミの妹は付き合ってんの?」

「⋯⋯」

「だからあの場から逃げた?」

「⋯⋯」

「優しくないって、こういう事だから?」



俯いたままのわたしに先輩は矢継ぎ早に話かけてくる。

どうして先輩がそんな事を聞くのかなんてさっぱりわからなかった。

わからなかったけれど、こうして追い掛けてきてくれてわたしの隣に座る先輩を失いたくなかった。