まだ何か凛は先輩に話し掛けていた様に思う。
だけどわたしはそれを無視して三人に背を向けて走った。
「っ澄?」
後ろから聞こえた声は、先輩のものだった。
きっと誰も追い掛けてきてはくれないのだろうと思った。
だっていつもそうだから。
登校する時にわたしが逃げる様に二人を置いて先に行っても、凛も広大も追い掛けてなんてこない。
追い掛けてきて欲しいわけじゃないけど、その度に喪失感があった。所詮わたしはその程度なんだって。卑屈なのはわかっている。わかっているけど、何も期待しないなんて出来なかった。
だって凛は何があってもわたしの妹で、広大は好きな人で。
だけど今は─────、
今は、二人の事なんてどうでもよかった。
知春先輩が追い掛けてきてくれれば、それだけで救われた気になれたんだ。
「澄─────!」
ショッピングモールのエスカレーター脇で先輩の手がわたしの腕を掴んだ。
追い掛けてきてくれた。それだけでわたしは走る足を止めて泣きそうになった。
まるで面倒くさい彼女みたいだって自嘲しながら「先輩、」と続く言葉も考えずに発していた。
何度も、何度も「知春先輩」と名前を呼んだ。



