キミと世界が青めくとき 【完】


カーテンを開ければ、黄色い世界は姿を消して照りつける太陽が眩しかった。

冷房を止めて図書室を出て、先輩と廊下を歩く。

こうして先輩と学校で図書室以外の場所で歩くのだって初めてだ。



「先輩って本当にこの学校の生徒として存在してます?」

「え?なにいきなり。こわ」

「だってわたし学校で先輩の姿を見たことないんですよ?たまにこの人本当にここの生徒なのかなって思っちゃいます」

「そもそも三年と二年じゃ活動範囲違うじゃん」

「それはそうですけど⋯」



先輩の言う通り、三年生の教室は二階部分にあり、移動教室等はほとんど一階部分で行われる。だから三年生は二年の教室のある三階には滅多に来ないし、来たとしても移動教室用の教室は西側にあって、一番東側にあるわたしのAクラスは例え三年生が移動教室の為に三階に上がって来たとしても遠すぎて会う事はないだろう。


二年や一年も三年の教室のある二階には他に職員室しかないから、あまり足を踏み入れる事がない。

だから会わないっていうのは当然といえば当然なのだけど、わたしは殆ど毎日先輩と図書室で会っているからか普段先輩の姿を一度も見かけない事が少しだけ違和感だった。



「でも俺は結構キミの事見掛けるけど」

「え?」

「渡り廊下のとこのベンチでいつも昼食ってるでしょ」

「っ!な、んでそれを⋯!?」



わたしは一度も先輩を見たことがないのに、先輩はわたしの事を見たことがあるらしい。

見とことというか、どこでお昼を食べているのかを知っているらしい。


まさかの言葉に驚くわたしを他所に先輩はご機嫌に鼻歌を歌っていて。




「実はキミが食べてるあのベンチ、俺の教室の前の廊下の窓から丸見えなんだよね」

「え゛っ」

「最初はたまたま見掛けたんだけど、晴れてる日はいっつもあそこで飯食ってるでしょ」

「どうして今まで教えてくれなかったんですか⋯」

「何を?」

「わたしの事を見かけていたなら、教えてくれればよかったのに⋯」

「キミがいつも飯食ってる場所知ってるよって?変でしょ。この話の流れのタイミングだから言っただけだし。知ってる事を隠してたわけでもない」

「⋯そりゃそうですけど」



先輩の言っている事はわかる。

わかるけど、自分の気付かぬうちに先輩に見られていたと思うととてつもなく恥ずかしい。