キミと世界が青めくとき 【完】




「ねー、ねー、澄ちゃん?」



だけどすぐに先輩はいつもの様にその顔に優しい笑みを浮かべる。



「今日は一緒に帰らない?」

「⋯一緒にですか?」

「そ。そんで、付き合って欲しいところがある」



今まで放課後まで一緒に過ごす事はなかった。

わたしが本を読み終えて先に帰る日もあれば、先輩が先に帰る日もあって。

そういえばわたしが先に帰った日は先輩はその後図書室で何をしているんだろうか?

わたしが先に帰る時は大抵先輩が寝てしまった時だったりするけど時折、起きているのに「俺はもうちょっとしたら帰る」と言って留まる時もある。


何にせよ、こうして放課後に図書室以外の場所で過ごすというのは初めての事だ。



「付き合って欲しいところって?」

「映画館」

「⋯映画館?一体何をしに?」

「そりゃ映画を観る為でしょ」



当たり前じゃん、みたいな顔をされるけれど、わたしが聞きたいのはそういう事ではない。

どうして映画を観るのにわたしを誘うのだろう?

いつか先輩に言われた様に、考えている事が顔に出ていたのだろうか。



「前に澄が読んでた小説、そういえば夏に公開だったなって思い出して。まだ上映期間内だから、一緒にどうかなって思ったんだよ」



先輩はわたしの疑問に丁寧に答えをくれた。