長い担任の話も終わり、午前で学校は終わる。


数人のクラスメイトがこの後カラオケ行こうぜって話しているのを横目にわたしは図書室へと向かった。



残暑が続く九月。冷房のスイッチを押して、入口脇の棚からノートを取り出した。


返事は来ていないと思っていた。

だけど、ノートの最後に書かれていたのはわたしの字ではなく、少し右上がりの字。



<良い夏休みを!>



わたしの真似をしたのかそうではないのかはわからないけれど、わたしの文字の下には同じ言葉が並んでいる。

違うのは、下の文字の方が大きくて、ビックリマークがついているという事だ。

しかもこのビックリマークも大きくて、つい笑みが零れた。


きっと、夏休み前、わたしの後に書かれたであろうその文字。

彼がどんな事を思いながらこの言葉を書いたのかはわからないけど、彼の文字は何だかわたしに元気をくれた。


顔も名前も知らない人だけど、わたしは彼の夏休みが充実したものになるように願ってこの言葉を書いた。

果たして彼もわたしと同じ気持ちだったかはわからないけれど、同じ気持ちだったらいいなって思う。


そして彼に、わたしの夏休みは今までの夏休みの中で一番楽しいものになりました。って言いたくなった。



だからわたしは読み終えたSFファンタジー小説の感想をノートに書き込んで、最後に<良い夏休みを過ごせました>って書いた。