長い夏休みが明けて新学期が始まる。



変わらずわたしは凛と広大と登校をしていた。



「広大夏休みの間にめっちゃ焼けたね~」

「そういう凛はちょっとデブったんじゃね」

「デッ、!?せめて太ったって言ってよね!?」

「怒るところそこかよ」



楽しそうに会話をする二人の後ろで、まだまだ強い日差しを降り注ぐ太陽を見上げる。

すると急に振り返った凛の瞳がわたしを映した。



「そういえばお姉ちゃん、夏休み中に結構出掛けてたよね?」

「⋯え?」

「明らかに図書館に行ってるんじゃない日があったじゃん」

「あー⋯、うん」

「どこかに出掛けてたの?」

「⋯それは、」

「ていうか誰と!?お姉ちゃん、友達出来たの?ね、広大お姉ちゃんの友達誰か知ってる!?」



興味津々といった感じの凛は「ねぇ、誰と出掛けてたの?」と再度聞いてくる。

それに何て答えようか考えあぐねていると、凛は更に大きな声を出した。



「もしかして彼氏とか!?」

「は、澄に?」

「何よ広大。お姉ちゃんにだって春が訪れたのかもしれないじゃん」

「いや、彼氏はねーだろ、さすがに」

「そんなのわかんないじゃんー!」



⋯⋯なんだろう、この感じ。

わたしの話題に、わたしが置いてけぼりにされている。

勝手に話が進んで盛り上がって、そして二人して嗤う。


凛や広大にわたしを馬鹿にしているつもりがなくても、やっぱりわたしはそれを見下されていると思ってしまうし、想い人である広大にそんな風に言われてしまっては立場がないというか、普通に傷つくと思う。


だけど不思議と今は、広大の言葉に傷付いたりなんてしなかった。



「わたし、先に学校行ってるね」

「あっ、お姉ちゃん!?」


知春先輩の事を話すつもりもないわたしは、二人を置いて先に学校へと向かった。