キミと世界が青めくとき 【完】



「って、俺のじいちゃんの話はいいから、自分の写真見てみたら?」

「⋯自分のはいいですよ」

「そんな事言わずに。ほら、これとかめっちゃ良く撮れてるじゃん」



そう言いながら先輩はわたしと一緒に出掛けた時の写真を真ん中に集めてくれて、海に手を入れて笑っているわたしを収めた写真を指さした。



「いつの間に撮ってるんですか」

「澄が海に夢中で全然カメラに気付いてない時」

「わたし風景ばっか撮ってるのかと思ってました」

「だからこその自然な表情じゃん」



先輩はいつの間に撮ったのか、結構な枚数のわたしの写真を見せてくる。

横顔だったり後ろ姿だったり、引きの写真だったり、本当にいつの間に?ってくらいドアップだったり。

わたしは写真に撮られる事が好きではないけれど、写真の中のわたしは自分で言うのは何だけど、どれもいい表情をしている。


笑っていたり、海を真っ直ぐ眺めていたり、わたしの背丈より大きな向日葵を見上げていたり。


どの写真も共通して穏やかな表情をしていて、知春先輩といる時のわたしはこんな顔をしているんだ⋯って少し照れた。



「俺は特にこの写真がお気に入り」



そう言って先輩が一番上に置いた写真は、しゃがんだわたしが手で波を掬って遠くへと飛ばしている横姿で。

わたしの前に放射線状に舞う水しぶきと、足元の白い波とその先の鮮やかなブルーが何とも夏らしい一枚だった。



だけど先輩はその構図よりも、わたしの表情がお気に入りらしく、




「この時の澄、めっちゃいい顔してる」

「⋯自分じゃよくわかりません」

「特にこれは目がキラキラしてんだよ」

「目がキラキラしてるなんて初めて言われました」

「本当に?澄の目って名前の通り澄んでてキラキラしてるけど」

「⋯本当ですか?」

「特に本読んでる時とか」



やっぱり、過去にそんな事を言われた経験のないわたしは“可愛い”とか“綺麗”だとか言われたわけではないのに妙に恥ずかしくなってしまう。



「耳、赤い」

「先輩がそんな事言うからです」

「事実なんだからしょうがねぇじゃん」



何が事実だ、と思ったけれど、嬉しかったからそれは言わないでおいた。