キミと世界が青めくとき 【完】


教室の自分の席で一人本を読むわたしには声を掛けてくれる様な友達はいない。

昔から友達を作ることが苦手だったし、わたしよりも皆凛と友達になりたがった。

凛のついでで仲良くされるくらいなら一人の方がいい。

凛と比べられて影でコソコソ言われるくらいなら一人の方がマシ。


今夏、映画化が決まった恋愛小説を読みながらこの本を読み終えたらまた感想ノートを書き込もうと考えていた。

自己満足だったはずのノート。

来るとは思っていなかった返事。

間違いなくわたしは感想ノートの返事を待っていた。




休み時間の度にわたしは小説を読む。

本を読んでいる間は教室のガヤガヤとした賑わいも完全にシャットダウンする事が出来た。

昔から─────。

わたしは小説の世界に一人で入り込む。

それだけは誰にも邪魔されたくないし、誰にも邪魔できないと思っていた。

だけど今は、感想ノートに返事をくれるその人にだけは、わたしの世界に入ってきて欲しい。

理由は感想に対する返事ではなく、相槌のように返事をくれるから。


わたしの世界を邪魔するわけでもなく、知ろうとするわけでもない。

ただわたしの隣でわたしの世界に触れているだけの様な気がするから。



返事をくれる人が誰かなんてどうでもいいし会いたくもない。男性か女性かもどっちでもいいし、その人が何故返事をくれるのかだって正直なんだっていい。

ただわたしには今のこの交流が楽しいってだけ。