行こうかと促されて、席を立つ。

 午前中いっぱい使って、二カ所の内覧をした。
 どういうこと?一人暮らしなのに、割と広い部屋と高層階を希望している。

 お昼ごはんをイタリアンのお店に入った。
 「亮ちゃん。ウチの会社にいること自体驚いたんだけど。」
 「雫はどうしてウチの会社に入った?」

 「お父さんが、ここの取引だか、経営者に知り合いがいるとか言っていい会社だからインターンシップへ行ってみたらと言われたのが最初。インターンシップも私クラスの大学だと入れない会社だったから来てみてびっくりした。そしたら、なんか担当の人に気に入られて受けたら何故か受かってしまって。奇跡的だった。亮ちゃんは?アメリカで就職したの?」
 「……おじさん、約束通り何も話さないでくれたんだな。雫が受かって良かったよ。」

 「どういうこと?」
 「この会社は、父の親族の経営している会社なんだ。父の兄が社長。高野卓社長だよ。」
 え?言われてみれば高野社長だったような。え?じゃあ。

 「父は、アメリカ支社の支社長。俺は、父の仕事の手伝いをしていたんだ。」
 「お父さんの知り合いって、まさか……」

 「そうだね。父さんだ。雫が小さい頃何度か帰国していたし、僕のことを君のお父さんに頼んでいたからね。父親代わりとして優しくして頂いた。」
 「楓とは、まあ付き合ってはいなかったが、好意を受け取れなかったし、雫なら紹介してもいいとおじさんは思ってくれたんだろう。おじさんは俺の気持ちも気づいていそうだったしな。」

 そうだったのか。私って馬鹿みたい。
 お父さんも言わない方がいいと思ってそうしてくれたんだね。
 それはお姉ちゃんにも知られない方がいいもんね。
 でもいい会社だったし、感謝しかない。