ずっと一緒に居るから、やひの気持ちを知りたくない。

 私がそう言うと、何故か葉月が悲しそうな表情を浮かべた。

「……茉優ちゃんは、それでいいの?」

「私……?」

「うん。千代河君に渡さなくて、後悔しないの?」

 ――ズキッ

 嫌な音を立てて、心臓が鳴った。

 もちろん、後悔するし悲しいし嫌だって思う。

 でも……私なんかじゃ、やひに気持ちを伝えられないから。

「後悔、しないよ。っていうか、葉月のほうが大事じゃん。」

「へっ……? 私のほう……?」

「チョコあげるんでしょ? 片桐先輩に。」

「ま、茉優ちゃん……!」

 相変わらず、可愛い反応だこと……。

 相手の名前を出しただけで、初心な葉月は顔を真っ赤にしている。

 それを可愛いと思いながら、上手い具合に葉月の話題へとすり替えた。

 葉月に、これ以上詮索されないように。



「葉月、また明日ね。」

「うん! ……あっ、颯斗先輩っ!」

 私に手を振り返してくれた後、お目当ての人を見つけたのかあからさまに嬉しそうな様子の葉月。