「茉優? どうした?」

「……別に。」

 やひに突然声をかけられ、はっと我に返る。

 いけない、こんなところでぼーっとしちゃ。

 昔からの癖で、つっけんどんに返す。

 でもやひは慣れているから、気にも留めない。

「そっか。じゃ、また放課後な。」

「はいはい。」

 身をひるがえして自分の席に戻っているやひの背中を見ながら、ぼんやり考える。

 今年は、チョコを作らない。

 気持ちはきっと届かないし、私みたいな可愛げのない女より、可愛げのある女子に貰ったほうがやひも嬉しいだろう。

 自分で考えて悲しくなったけど、これはもう決めた事。

 私があげなくても、やひは何とも思わないだろうし……。

「茉優ちゃん……今年も千代河君にあげるの?」

「ううん、今年はあげないよ。私じゃなくても、他の子が渡すだろうし。」

 正直、渡さないっていう結論は嫌だ。

 毎年あげてたし、好きな人にチョコをあげたいと思うのが乙女の性。

 でもそれ以上に、諦めの感情が大きかった。

 やひに直接聞いたわけじゃないけど、分かる。