去年までなら絶対に書かなかった、恥ずかしすぎるセリフ。

 何が……“やひのために”だ。

 こんなの、恥ずかしくてどうにかなりそう。

 公開処刑とも取れるんじゃないかと本気で思うも、書かないとどうにもならない。

 やひが帰ってくるまでには、時間がある。

 でも、悠長にできる時間なんか一秒もない。

 この一秒も、惜しめない。

 震えている手で、チョコペンを握り直す。

 このハート形の真ん中に、書けばいいだけ。

 書けばいいだけ……だった、のに。

「……茉優?」

「や、やひ……っ!?」

 何で、どうしてやひがここに……?

 背後からやひの声が聞こえて、ばっと後ろを振り返る。

 当然、チョコを隠すように。

 今一番、バレたくなかった人物に……バレてしまった。

「やひ、部活今日は長引くんじゃ……」

「今日な、なんか顧問が急用が入ったらしくて。それで、早く帰ってこれたんだけど……。」

 一旦、意味ありげに言葉を切ったやひ。

 何を……言われるんだろう。

 私の頭の中は、その言葉で溢れ返っていた。