ここまでしてくれたのに、動かないとか……やっぱ、ダメだよね。

「……よしっ、やるぞっ!」

 大丈夫。私なら、できる。

 やひに振られても、葉月に泣きつけばいいだけだしっ……。

 それはそれでどうかと思う……そんな事言われそうだけど、仕方ない。

 ……というか、早くしなきゃやひが帰ってくる。

 私は時計に目を動かしてから、材料を取り出して作業を何とか始める。

 やひに振られたら、私はもうチョコをあげられない。

 それは私がよく分かってるし、私もあげようと思わない。

 やひはあんなにもモテるんだから、私よりもいい子がいるし。

 だったら、私が出る幕も隙もなくなる。

 もしやひに好きな子ができたら? その子しか、見えてないって分かったら?

「そんなの……。」

 嫌だ。やひは、誰にも渡したくない。

 やひは私の彼氏でも何でもないのに、どうしてもそう考えてしまう。

 こんなに悩むんなら、さっさと告白してしまえばいいって思われるだろうなぁ……。

 それができたら、どんなに良かったか。