まぁ、言うてすぐ終わるし。今日のは。

 私の得意な教科しかないし、そんなに時間もかからない……はずだし。

 言い聞かせるように何度も口の中で呟き、スクールバッグをソファに置いてエプロンをつける。

 とりあえず、夜ご飯の準備だけしておこう。

 すぐに用意ができるように、最初に夜ご飯の仕込みをしておく。

 ……あんまり、時間かけられないな。

 時計に目を走らせ、私はできるだけ手際よくご飯の準備を始めた。



 パタン、と冷蔵庫の扉を閉めて一息つく。

「はぁ……。」

 ただのため息。それなのに、私には覚悟の深呼吸のように思えた。

 これから私は、やひにチョコを作る。

 ただそれだけ、それだけの事なのに……どうしてこんなにも心臓がうるさいのか。

 落ち着かせようにも、どうにも落ち着かない。

 毎年の事をすればいいだけなのに、今年は違うと思えば手が覚束なくなる。

 ……こんなんじゃ、ダメなのに。

 葉月にたくさん背中を押された。喝を入れられた。

 こんな姿葉月に見られたら、今度こそ泣かせてしまう。