そんな言葉はあえて言わず、別の言葉を被せた。

「何で茉優が謝んの?」

「へっ……?」

「茉優が謝る必要ないだろ? 俺が勝手に、空回りしただけだし……。」

 茉優じゃなくて、俺が全面的に悪い。

 こういうお人好しっぽいところもあるから、余計に目を離せなかったりする。

 ……でも、言った後に気付いた。

 俺、余計な事言ったな……っ。

 空回り。茉優にとっては、何を意味してるか分からないだろう。

 茉優も不思議に思っているらしく、小さく首を傾げていた。

「え……?」

 ちっ……俺、やっぱり自制をもっと利かさないと。

 改めてそう思い、茉優の言葉を強引に遮る。

「や、やひっ、それってどういう――」

「何でもねぇよ。ほら、早く行かないと遅れるぞ。」

 ぽけっとしている茉優を置いて、先を急ぐ。

 ごめんな、茉優。こんなダメな幼馴染で。

 こんなメリハリもつけれない、白黒つけられない俺で。

「あ、ちょ……!」

 焦って俺のあとを追いかけてくる茉優に、俺は一人そんな思いを抱いた。