「どこも怪我してなさそうだけど……痛いところとかないか?」

「あ……う、うん。ない、よ……。」

 やひが助けてくれたおかげで、痛みはない。

 でも、私は体じゃなく……心臓が痛いくらい高鳴っていた。

 おぼつかないような言葉でそうやひに返す。

 するとやひは、自分のことのようにほっと安堵の息を吐いていた。

「なら良かった。茉優が怪我してなくて。」

 多分、この時にやひに恋をした。

 その日以来やひが誰よりもかっこよく見えて、男友達やただの幼馴染として見られなくなった。

 やひを見ると心臓がうるさくなって、息ができなくなる。

 でもまだ、気持ちを伝えられていない。

 今更伝えてもって感じだし、きっとやひは私を好きにならない。

 やひにとって私は幼馴染か、いいところで仲の良い女の友達だ。

 それに……。

「ねぇ、今年のバレンタイン誰にあげるか決まってる?」

「もっちろん! そういうあんたも、でしょ?」

「よく分かってるじゃん! あたし今年も千代河君にあげるよ!」

「やっぱりね~。」