「何やってんだよ、俺……。」

 こんな事があるから、こうなるから……気持ちを言いたくないんだ。

 今みたいに、怖がらせるから……なんて。

 ……ただの、保身か。

 茉優にこれ以上嫌われない為、大人しく家から出て行く。

 茉優からチョコが貰えないのは、正直結構痛い。

 でも……それ以上に、茉優に嫌われるのだけは嫌だ。

 俺には茉優だけしかいらない。茉優さえいれば、いいから。

 今すぐそう言ってしまいたくて、行き場のない気持ちをため息と一緒に整理する。

 もう少し、自制を利かせるようにならないと。

 そうじゃないと、茉優をただ怖がらせて好きなんか幻になる。

 ヘマをしないように、喝を入れないと。

 バレンタインまでは、あと二日。

 あの茉優ならチョコをくれるんじゃないか……っていう、少しの希望を抱いて。

 もうすぐそこに迫ったバレンタインを、憂鬱に思った。



「おはよ、茉優。」

 その次の日、俺がそう声をかけると、茉優の気まずそうな声が返ってきた。

「お、おはよ……やひ。」