でも茉優はムキになっているのか、反論してきた。

「だってやひ、バレンタイン嫌なんでしょ? だったら少しでも、チョコ減らしたほうが……」

「確かに、俺にとってバレンタインは苦痛でしかないし、嫌だ。できればなくなってほしい。」

「だ、だったら……」

「でもそれは、他の女子からの、だけだ。」

 茉優以外のチョコなんて、俺には必要ない。

 逆に言えば、茉優のチョコが俺には必要。

 ……だから何で、作らないなんて言うんだよ。

 茉優は、俺のことなんかどうでも良いんだろう……けど。

 俺にとっては、茉優は……っ。

 ――誰よりも、愛しいんだよ。

「で、でも私はもう作らないって決めたの! 高校生にもなって作るのってどうかと思うし、もうそんな子供じみた事したくないだけだから!」

 だけど、俺に気持ちなんて届くはずなんてなくて。

 強引に俺から逃げた茉優は、荷物を持ってリビングを出ようとした。

「今日はもう帰って! 今日のやひ、なんか変だから!」

 ……変、か。

 大きな音を立てて閉まったリビングの扉を見て、人知れずため息を吐く。