俺に漫画を返した茉優は、まだ拗ねているのか若干素っ気ない。

 それさえも、可愛いと感じるんだからもう末期だ。

 声に出していないだけ、褒め讃えてほしい。

 その時に、テレビの音声が俺の耳に届いた。

《街はもうバレンタイン一色です! なんてったって、あと二日なんですから!》

 テレビ越しに、キャスターの甲高い声が聞こえてくる。

 その声色から分かるように、キャスターもバレンタインに胸を躍らせているんだろう。

 正直、俺はバレンタインは嫌いだ。

 チョコが嫌いってわけじゃない。貰えるのなら貰うし、無下にするつもりもない。

 だが……もううんざりしていた。

 こんな事言えば、世の男共から叩かれるだろう。それを踏まえて、言わせてもらう。

 ……俺は、茉優だけのチョコが欲しい。

 俺にチョコを渡してくる奴らは、大抵下心しかない。

 純粋に接された事なんて、数えるほどしかないんじゃないか……なんて。

 でも茉優は、素直に純粋に変わらず接してくれている。

 幼馴染でずっと一緒に居るからっていうのもあるかもしれないが、俺には茉優だけしかいないってずっと思っている。